2011年12月07日

画像アウトバーン顔2 2[1] また懲りずに「R35 GT-R」かい!? なにが「陸の王者」だ!

届いたばかりの「ホットバージョン」のパッケージを開けたとき、正直、がっかりした。しかし――。

土屋圭市、織戸学、谷口信輝のキャスター陣に、ちょいとピントの狂ったところが魅力のSATOKOがからむ軽妙なオープニングに、少し機嫌を直して、最初のコーナーsatoko_a《GT-R2012年モデル 日産ニュルブルクリンク 開発実験密着レポート》を賞味することにしたら、いきなりプロジェクト・リーダー、水野和敏さんの怒号が飛んできた。

「ターボだから、しょうがねえんだ、これでいいんだ、と今までの慣習に甘えて、自分たちが今、何やってんのか、もう一回、足元をよく見て、考えろ。お客様の期待値に対して、俺たちは仕事してるんで、エンジン屋の言い訳を証明するためにやってんじゃねえ! エンジン屋はもう一度、そこのところを考えろ」

スタッフにピーンと緊張感が伝わる。のっけからいいものを見せてもらった。

R35の集大成をめざす12年モデルに、水野リーダーは二つの改良点を掲げて、さらなる進化へ挑んでいた。

①エンジンのパワーアップ。

②シャシー左右非対称セッティング。

画像ニュル走り6 2[1] そのハイライト部分の説明は、水野節で聴いてこそ「なるほど、そいつは楽しみだ」という気になれるものらしいから、ぜひ現物で、どうぞ。特に②のテーマでは、凄いことを考えている。大雑把にいえば、もともと右寄りに荷重がかかっているのを、走った状態でシャシーを左右非対称にセッティングすることと、新開発のタイヤで均一化できれば、限界時の安定した挙動が、さらに高次元でえられるはずだ、と。

そのために、ダンロップの技術陣も、グルーブ(溝)の形状に段差をつけ、ブロック剛性を向上させ、それによって限界時のヨレを減少させる、ニュルとR35用のニュータイヤを投入したのである。その緊迫したアタック・レポートは、やっぱり必見モノだ。

このあと、GT-Rのご馳走攻めがつづく。800馬力を平気でオーバーしてしまうR35ストリートチューンの筑波最速戦ときた。かつてR33が登場してきた頃、同じような企画をやった記憶がある。ショップ関係もR35の登場により活性化したのだろうか。

間違いなく、タービンチューニングしたGT-Rたちの筑波バトルの迫力は相当なモノだった。しかし、だから、どうなの? と問われれば、それまでの話である。

アウトバーン②その点、パッケージでは虫眼鏡でないと判読できないような小さなタイトルで告知されている《マル編ホンダ、GT-Rアウトバーン300km/hに昇天!》こそ、35GT-Rものとしては必見映像として推奨したい。

折から、中国自動車道でのフェラーリ多重追突事故で、走り屋たちは肩身の狭い想いを余儀なくさせられている。しかし、だ。ドイツのアウトバーンは実力の世界。自己責任で全開走行できる。だからクルマも、人も磨かれる。今回は、そこへ2012年モデルでドイツのアウトバーンを走らせ、人とクルマの一体感が醸し出す《至高の世界》へ誘(いざな)ってくれる。

その舞台に選ばれたのはドイツ中部をつらぬくE4の高速自動車道。ドライバーは日産開発ドライバーのトップガン、神山幸雄さん。「ドイツのニュルでは神風カミヤマと呼ばれ、凄い奴だと知れ渡っているドライバーです」と、ナビシートに座る本田俊也編集長が紹介する。

合流して、たちまち200km/hを超え、GT-Rは路面のうねりを利用して軽くハミングしている。左右を低い丘陵が挟んでいるから、突風に見舞われる心配はなさそうだ。300km/hをさりげなく超えている。長いストレート。 トラック数台の後ろ姿があっという間に迫ってくる。

314_2 「ああ、ちょっと難しいのかな」

日産のトップガンの語り口はあくまでも静かだ。一息、間を置いてから、

「行きましょう」

GT-Rのダッシュがはじまった。

「どうですか?」

と、スピードメーターの方を指さすトップガン。世間話でもする口調だ。

「314! うわァ~。おっ!」

上ずった声で本田君が応える。カメラがパーンして、目が点になっている本田君の表情をアップでとらえる。そして絶叫する。もう一度、うわァ~。おっ、と。

「大丈夫です」

本田君もそのスピード感に慣れたらしく、やっと対応できるようになったらしい。

「280㎞/hで右旋回していても、まったく、ぶれる気配がありません、クルマが。物凄いスタビリティですね、信じられない」

と、解説を加え出した。3分20秒ほどのコーナーだったが、塩味が利いてて、いいクリスマスプレゼントを貰った感じがする。これが映像マガジンの醍醐味だ。ガンさんの新しいドライビング講座制作に向かって、ぼくも燃えはじめたぞ。

同じように、この号の《メディア対抗ロードスター4時間耐久レース 土屋一家が殴り込み!》は、ドラテク講座として捉えると、とんでもないくらい「情報量」満載の企画となっているのに、気づいて欲しい。

なにしろ、レースの途中で路面が雨に見舞われ、超ウエット状態になる。それを土屋ドリキンがどう攻略していくか。これは見もの。とにかく圧倒的な疾さが体感できるだけではなく、臨機応変のコースの取り方、シフトワーク、すべてが盗める仕組みになっている。GT-Rと違ってユーノス・ロードスターが教習車である。まことに身近なのがいい。

HV_hyousi_0001 荒チャレンジ人物 2 2[1] この号のお薦めをもう一つ。GT500ドライバーの荒聖治君が、あえて「ドリフトマッスルチャレンジ」に一生徒として、参加していること。愛車の32GT-Rをカッコよく走らせたい、と正直に抱負を語ったあと、土屋講師の前で走るのだが、いやぁ、ドリフトマッスル走りって、楽しそうだなっていう気にしてくれるところがいい!……と、ここまで紹介して来て、なにかが物足りない。なんだろう? わが胸に問う。

エンターテインメントを主軸にするのはいい。が、それの基軸にあるクルマの日常感が希薄すぎないか? その観点から、もう一度、この第3号を見直してみようかな。