「みんカラ」掲載 2012年07月18日

峠魔王戦改めてHot-Version 116号を賞味している。

――峠マシンか、サーキットか。それぞれのステージで、その名を轟かしたマシンが、ここ筑波に集結! 無差別級、ストリートチューニング「バトル・ロワイヤルin筑波」!

おどろおどろしいナレーションではじまる、この号の「目玉企画」。

「史上最大の激戦!」と銘打った峠派マシンvs.サーキット派のガチンコ勝負が、筑波を舞台にして、はじまろうとしていた。やっぱり、ベスモのDNAは、ステージが筑波となるだけで、いろんな想いが目を覚ますものらしい。この平野義和さんのナレーション、悪くはないが、神谷明さんだったら、もっといいのに、などと……。

 

*伊達にグンサイで煮詰めたわけじゃない! 筑波サーキットで峠派はかく戦えり!

*伊達にグンサイで煮詰めたわけじゃない! 筑波サーキットで峠派はかく戦えり!

さっそく、編集長の本田俊也クンに、あることを電話で問い合わせた。すぐに「群サイ初ロケ」と題して、詳しい内容の返信がとどく。

体調不良ということですが、いかがでしょうか?

お問い合わせのあった、群馬サイクルスポーツセンターの初ロケは、BM1991年11月号の「170ps New CIVIC緊急試乗 by 黒沢元治」です。

HONDAからは発表前の車両なので、人目にさらされない場所での収録という条件でした。

この企画を任された私は、当時アドバイザーであった白井氏(ダートドライバー)と、群馬サイクルセンターの存在を調べだし、巨漢ふたりで大汗をかきながら、貸自転車でコース内のロケハンをして、凄いコースであることを確認。当時、自転車振興会の管理物で、外部への貸し出しは一切NGだったのを口説き落としました。

「ベストモータリング」1991年11月号でグンサイをせめるEGシビック 

「ベストモータリング」1991年11月号でグンサイをせめるEGシビック

お電話でお話しした通り、ガンさんは開口一番、「素晴らしいコースだな」と、グンサイをテストコースとして好評価。

シビックのインプレッションでは、「言葉を失うほどいいなぁ」という名台詞を残していただきました。

その後、ベスモやホットバージョンで使用しているうちに、2000年ごろより全日本ラリーのSSとして使われるようになりました。2008年の大輔(伊藤)の事故では修羅場も経験させていただき、私がグンサイに関して、誰よりも思い入れは強いのは、そんな理由です。

そうか。初めて群サイを知った遠い記憶が蘇る。念のため、1991年度のビジネス手帳で確認してみると、9月5日の早朝、ぼくは単身、そのころ手に入れたばかりのセルシオで、関越自動車道を北上、高崎の先の月夜野ICをめざした、と書きとどめている。確かに本田君の言う通りで、NEWシビックの発表会は5日後の9月10日だった。

あの当時、サイクルスポーツセンターといえば伊豆にあるもの指していた。F40のプレス発表などで一躍有名になったテストコースだったが、なにしろ東京からは遠すぎた。くわえて、タイヤのブラックマークをつけるのは厳禁、などとコース側はなにかとうるさかった。で、あまり使いたくない。敬遠していた。ところが――。

なんと、練馬ICから1時間30分少しで、群馬サイクルセンターに着いてしまった。山の中というより、緑の多い丘陵に切り開かれた6キロのサイクリンクコース。エスケープゾーンは、まったくない。が、バトルをするわけではない。Newカーを味見するクローズド・コースとしてなら、悪くなさそうだった。

すぐそばの猿ヶ京温泉に前泊したスタッフは、すでにコースインしていて、撮影開始のサインを待っていた。5代目のNewシビック。170ps、1.7リッター、直4、DOHC,乗り手はガンさん。この時のガンさんのインプレッション第一声が「う~ん。言葉を失うほど、いいなぁ」だった。そしてつづけた。「(車載カメラの)テープはまだ大丈夫? もう1ラップ、してこよう」

あれから21年か。いまやグンサイといえば「峠派マシン」を磨き鍛える《聖地》となり、ホットバージョンとは切っても切れない関係になっている。そして、バトルの聖地、筑波サーキットに乗り込んで、「サーキット派」ストリートマシンと対決するという企画が売り物になるわけか。いうならば、かつての「異種格闘技・王者決定戦」の現代版と考えればいいわけだ。

先頭の赤いマシンが「ローンチコントロール」を作動させたMCR R35GT-R

先頭の赤いマシンが「ローンチコントロール」を作動させたMCR R35GT-R

8台のバトルマシンが筑波のスターティンググリッドに勢ぞろい。ストレートでは敵わないまでも、1コーナー、第1.第2のそれぞれのヘアピン、ダンロップ下、最終コーナーでグンサイ生まれがどこまで本領を発揮してくれるか。見どころは多い。

レッドシグナルが青に変わる。スタート!目を奪われたのは、イン側最後尾にいたMCR R35GT-R(650ps)のロケット・ダッシュである。F1で採用された「ローンチコントロール」を作動させて、第1コーナーにトップで飛び込んだ。その模様が何台もの車載カメラで見せてくれる。これは凄い。必見である。

その一方で、250psのスプーンCIVICを荒聖治クンが駆って、かつての桂伸一クン同様に、巧みにいじめられ役を演じて、湧かせてくれる。

峠派代表の「C-SERインプレッサ(470ps)」は、なるほどと感心させられるポテンシャルを各コーナーで発揮してくれる。

圧巻は織戸学クンが担当した「1000psRT-R」。まだできあがったばかりのHKSパーツで強化したマシンを、特に参加させたもので、織戸クンもユーモラスに腰の引けたコメントを連発していて、結構、楽しい雰囲気を招いていた。

1000ps GT-R1000psといってもブーストを控えめにしていると聞いたのに、乗ってみたら、やっぱり凄いよ。加速したらすぐにブレーキを踏まなきゃなんない。コーナーなんておっかない、危ない。もう、ぼくは責任が持てません。凄かった。刺激です」

バトルは5LAP。食い下がる「峠マシン」。簡単には抜かせない。間違いなく、心打つものがある。伊達にグンサイで煮詰めたわけじゃない。彼らの声が、確実にこちらに伝わる企画だった。

このほか、新しい86と、BZRをグンサイに初めて持ち込んで、比較テストしながらチューニングの方向性を探っていく。土屋、織戸、谷口のトリオは、ここではいい仕事をしている。生き生きしている。脇役のSATOKOも楽しい存在だ。ホットバ―ジョンは、そこまでの領域で楽しくやっていれば、いいのか。それとも……。