「みんカラ」掲載 2012年8月18日

ホットバージョンのvol,117には、もうひとつ、モータースポーツ振興に力を貸そうとする企画が仕込まれていた。

舞台は3月25日のTWIN RING MOTEGI。いささか間の空きすぎたレポートとなっているが、隔月刊行のHVとしてはやむを得ないところだろう。それでもいいじゃないか。こうやって、志のあるところを披露しているのだから。

ナレーションで、まず謳いあげる。

「日本を代表するスーパーなレジェンドたちがMOTEGIに集まった。その雄姿を一目見ようとファンも集まった。MOTEGI 1.5 チャレンジCUPだ! そのレジェンドとは?」

カメラがその顔ぶれを懐かしそうに追う。

ふくよかな笑顔で孫のような少年の肩を抱き、2ショットにおさまる高橋国光。

メディアに囲まれピットが出てくる中嶋悟。相変わらず、輪の中心だ。

少し、太めになった鈴木亜久里が、ラジオパーソナリティのピストン西沢と談笑している。アマチュアながら、西沢もシビックレースなどで鍛えた、歴戦の勇士。

金石勝智は現役を退いてから4年目。伝統の戦士といえるかどうかは別として、免許取り立ての直後のレースデビューとなったミラージュCUPで、ぼくも一緒に走った仲である。(あ、これは関係ないか!)

そして、土屋圭市も。彼の視線は、これから乗る自分のマシンに吸い寄せられてしまう。

用意されたマシンは、FIT RSのみ。

関東のアマチュアレーサーにとって数少ない登竜門『もてぎ チャンピオンCUPレース』の新設されたレースカテゴリーで、1500cc以下のノーマル市販車両に、レースをする上でのレギュレーションに合わせて、必須の安全装備(ロールゲージバー、バケットシート、フルハーネス、消火器、キルスウィッチ、ボンネット・ピン、牽引フック)を施せば、どんな車両でも参加できる。参加型レースとよばれる所以である。

FIT RSの場合、さらに機能的な部品としては、ダンパーをレース専用のサスペンションに。あとはMOTEGIのサーキット走行に合ったブレーキパッド、ミッションにLSDが入っているだけの改造範囲だから、あまりお金がかからないように配慮されている。

タイヤは公道走行が許される一般の市販ラジアルタイヤに限られる。なお、2002年1月1日以前のクルマは参加できない、という。

さて、フルコース(1周、約4.8km)を使っての予選アタックがはじまった。

「世界、そして国内でHONDAとともに闘ってきた男たちが、ちょっとミニなHONDAをマジで走らせる~」

ナレーションにも力が入ってきた。亜久里選手がそれに応える。

「楽しいね。昔、みんな一緒に走った先輩たちと、こうやって、また走れるのは」

HV117レジェンド走り

真っ先に悟選手がコースイン。続いて金石、そして1台だけレース仕様らしくカーリングの施された43号車を駆る土屋も……と、土屋のマシンに異変が起きた。ピットロードから本コースに入ろうとした瞬間、エンジンがダダをこねはじめた。回転がまったく、あがってくれない。

「なんだ、こりゃ! お~い、大丈夫か、これ!」

他車が順調にアタックに入る。土屋車はどこかでコースをショートカットしたらしく、慌ただしくピットインしてきた。

「3800回転で、リミッタ―が入っちゃうんだけど……」

ドリドリの訴えで、エンジンフードが開けられる。カプラーの接触不良だった。土屋がアクセルを踏み込んでみる。今度は大丈夫だ! が、すでに予選開始から7分40秒が経過していて、残り時間で3周できるかどうか!? タイヤも温まっていない。そこからの土屋の走りは、まさに必見もの。凄い! まさにドリドリ、降臨。