「みんカラ」掲載 2012年10月16日

当日、富士スピードウェイでのオフ会に参集した86とハチロク。計500台。

当日、富士スピードウェイでのオフ会に参集した86とハチロク。計500台。

久しぶりに「みんカラ」友だちから寄せられた『コメント』へ、せっせと返事を書きこむ時間が持てた。やっぱり、いいね。うれしいよ。Bee_a  この稿にとりかかった10月15日、午後2時30分現在で、11人が『因縁の仲』について、なにがしかの感想を寄せてくれた。ありがとう。

トップバッターは「ユーさん@midship」さん。ぼくの記事を読んだら、今回も購入したくなった、と最高の褒め言葉をいただいた。その感謝の気持ちを伝えたくて、ブログにお邪魔してみた。質感の高いデザインだった。「車に対する情熱をずっと持ち続けているおじさん」と自己紹介している。愛車のHONDAビートでFSWのフルコースを攻めた7分ほどの走行動画まで用意されていた。

2番目が「FRマニア」君。ぼくの記事を待っていたが、今回は発売日に購入して、もう観てしまったという報告。

3番目が「あっくんりょうパパ」さん。大井君の「ゴツン事件」でバンパーの前に立って「証拠」を隠していたシーンを懐かしがっていた。4番手が「TAKUV35」氏。すぐに新しいHVを買いに行く、とのことだった。

5番手が自動車工学に取り組んでいる大学生の「えむしい@さんよん」君。今回の「いいね!」クリックの1番乗り。お礼を伝えたら、内容たっぷりのコメントが返ってきた。6番手の「あど」さん。8月5日の富士で86バトルを生観戦していたとのこと。いつも、いい目配りのできる人である。

そして7番目「Bee☆R」。うん!? 『因縁の仲』の主役の片割れ、今井ちゃんだよ!「懲りずに、これからも精進します」と。以下、「miracle.civic」「AY345」「イワタカズマ」「CMO」の4人も揃って「ベスモ」がきっかけで、クルマの世界にドップリはまったうれしい「お仲間」たち。広報車事件、大井君の「ゴメン、ゴメン」などを共通の記憶として、いまも共鳴し合うことができる。なにかがぼくのなかで、快いメロディーを奏でながら、解凍されていくようだ。

さて、前置きが長くなった。86バトルの予選開始の模様から始めようか。ディレクターに起用された仁礼義裕は、この86バトルに投入された各ショップの取り組み、工夫ぶりまで、丁寧に追っていた。チューンドバトルの場合、その点を大事にしないと、単なる速さ比べにすぎなくなるのを、仁礼はよく承知している。

いつもの平野義和さんのナレーションが、賑やかに盛り上げてくれる。

「チューンド86は富士でどんな走りをみせてくれるのか。予選開始だァ。ちなみに今回はスピードリミッターが解除できなかったマシンが多かったため、スピードリミッターつきのレギュレーションとした。トップバッターはBee★Racingのハチロク~」

imai いきなり、今井ちゃんがアップで登場、自分のマシンについての抱負を語りをはじめた。お、いい味、してるぜ。ひょっとしてHVは、彼を専属キャスターの仕立てようとたくらんでいるのかな。特にこの号からは、そんな匂いがしないでもない。

「手軽にやってみたいな、と。肩に力を入れ過ぎず、タイヤ、ホィールに足回りを。ま、普通にみんなが手に入るもので、まず、走ってみたいな、と思って参加させてもらいました」

今回の86バトルのドライバーは、参加したショップがそれぞれに自前で委嘱する建前となっていた。で、Bee★Racingは社長が自らステアリングを握った。

最高速はスピードガン計測で、185.2キロをマークした。今井ちゃんはファイナルを5.1に変更して持ち込んでいた。クロスミッション、ファイナル変更は、NAチューンの醍醐味である。このあたりは旧型ハチロクチューンで体得した手法であった。

今井ちゃんはマシンつくりのプロ中のプロ。しかし、ドライバーとしてのレベルをぼくは知らない。そこで率直にご本人に問い合わせると、早速、返事が送られてきた。まとめると、こうなる。

――免許を取るなり、ジムカーナー、ダートラもどきを経験し、ストリートゼロヨンから峠を走る峠小僧に。さらにFISCOのスポーツ走行などを22歳までつづけ、富士フレッシュマンにBD105 ファミリアで初参戦。その後、KPにEPに86に、SA22CのRX-7、JSSのスカイライン、ロードスターレースの開幕戦。筑波のプレス対抗もCAR-BOY誌チームから参戦。ドラッグ関係ではタイに行ってランエボでレース参戦、アメリカで飛び込み参加したり、韓国に行ってデモラン等も経験。最近、ドリフトが少し、上達しました。チューニングカーで参加するのも、つくるのも好き。生涯、病気として貫きます♪

なんとまぁ、見事なクルマ野郎ぶり。で、第1コーナーの飛び込みから第2コーナーを下る予選アタックを拝見。ステアリング・ワークしか映ってないけど、今井の旦那、ちょいとこじり過ぎじゃないでしょうか。どうやら、ドーンと運んでくれるビッグパワーの調教がお得意とみたが……。

Best-Timeは2分14秒008。それが速いのか、遅いのか。各ショップのマシンのチューニングの程度、仕上がり、それに走りの生命を注入してくれるドライバーを、丁寧に紹介してくれる。いいねぇ、この丁寧さ。

N2チャンピオンの鎌田芳徳選手を起用したHP1ハチロクは、みんなで楽しくサーキットを走れる手軽さを狙って、突っ込んだチューニングはしていない。LSDもなし。フロントに225という少し細めのタイヤ(リアは255)をチョイスしたため、若干、アンダーステアが出てきた。その対策としてキャンパーを3度半まで施した状態で、2分12秒322をたたき出した。

ジムカーナー仕様をこの日のイベントのためにファイン・チューニングしたのが、名古屋からやってきたカーライフレボリューション K-one 86。ドライバーはスーパー耐久出場経験を持つ村尾真吾選手。富士を走るのは、久しぶりだという。最高速、182.2キロ、ベストタイムは2分14秒526。非力は否めない。

5jigen5 ZIGENインターナショナル86は、唯一、オートマチックトランスミッションでエントリーしていた。86のエントリーユーザーにも、気軽にサーキット走行を楽しんでもらえるパッケージで挑戦したい、と張り切っていた。最高速、181.31キロ、ベストタイムは、2分14秒136。今井ちゃんとドッコイドッコイじゃないか。

お次はARCグレージング86。ドライバーは小林真一。愛称は「番長」とか。HV名物「群サイ」を主戦場にした『峠・最強伝説』などでいい味を見せてくれている、あの強面(こわもて)のお兄さんが、まるで坂本竜馬がふるさとの桂浜で、太平洋に向かって、腰に両手をあて、胸を張り、理想を訴えるような姿勢で宣言する。ちょっとした役者じゃないか。

「気持ちは、全部抜きます。気持ちですけどね。でもね、一番、タイヤが細いから(225)、それがいい方に出るか、悪い方に出るのか。パワーのないクルマは、それなりの走り方、乗り方があるので、それにぼくが対応できるかな、です。ま、ぼくは天才なんで(ニヤリとしながら、一瞬の間を取って)1周あれば平気です」

MCR KOBAYASHI 番長が走り出した。最高速は185キロ、とこれまでのトップをマーク。タイムも2分11秒062と、ちょっと、飛びぬけた感がある。

 そしてお待ちかねのLEG MOTOR SPORT 86の番がきた。広島から自走で駆けつけてくれたという。特別指名を受けたドライバーが大写しされて、あごひげにめっきり白いものの増えた、懐かしい顔が登場した。そうか、大井貴之君は昔から広島のショップの人たちと懇意にしていたな。その線の推薦で、ガンさんの「ご老公シリーズ・山陽スポーツランド篇」に呼ばれ、見事に格さん役の大井を手玉にとったのが谷口信輝君だった。

 「レック号に乗る大井です。今回、みんながリミッターつきでレースをするという話を聞いて、225を履いていたのを、235の40(R18)という、ちょっと外径のでかいタイヤに替えました。これでスピードを稼げるかどうかな、と」

 最高速は185キロと、前を走るARC号と同じだったが、スリップを使って、あっさり前へ。この時、番長へ「グッド・ジョブ」サインを送る余裕。そして宣言する。

「全部のストレートでスリップを使う!」

ヘアピンを立ち上がって300Rへ。ブルーのマシンのスリップに入る。あっさり並んだ。そこで一発かます。

「ここは3(ギアのポジション)だよ、ジュンちゃん(うん? だれのこと?)」

 と、言いかけて、大井が気づく。

「あ。今井さんだよ!」

 その瞬間、左の縁石からはみ出してしまう。危ない。待っていたのは右へ回り込む300Rのコーナー。

「あ~。あ、は、は」

LEG OHI 因縁の仲との再会。大井の動揺を象徴するシーンが、爆笑を誘う。この調子では、本番の決勝レースでとんでもないことが起こるに違いない。間違いなく、ぼくは予感していた。

 となると、先を急がねばならない。申し訳ないが、この後、2分07秒台を出して予選上位に進出したカーメークrasty86や、チューニングメニューの多さではNO.1のレボリューション86、ハチロクと富士とドリドリの組み合わせを蘇えらせたamuse86、そして最速の2分05秒760、最高速188.6キロをマークしたAuto fctory86の詳細は、ぜひHV=118号の本編から鑑賞いただきたい。

 スターティング・グリットには恒例の逆ポールで10台が並んだ。3Lap勝負である。P.Pは予選最下位のK-one。今井ちゃんはイン側、3番手と好位置をゲットした。土屋圭市は6番手スタート。7番手に大井。ここはコクピットから解説する大井のコメントに耳を貸す、と。

「先頭の4台はチューニングの方向性的にストリート。で、真ん中の2台、3台がサーキット&ストリート。うしろがレーシング。要は速いってことですね」

  いよいよ、スタート。土屋はインを選んだ。それを車載カメラでリプレイする。「絶妙」という形容はこのためのものだったのか。クラッチミートはおよそ4500、トラクションのかかりのなんと滑らかなこbeeracingと。加速。軽々と前車(4番手のHP1)を右サイドからパスしていく。左斜め前にいた5番手の小林番長もとらえかかる。と、番長、シフトミスをやらかした。すかさず、大井も左から番長ハチロクを抜き去る。

「外から行きま~す。中から土屋さん」

 第1コーナーが待ち受けている。ナレーションの平野さんも興奮を隠さない。

「そしてトップは、なんと今井ちゃん! K-oneの村尾選手をパスして、なんとこの記念すべきバトルのトップへ浮上した」

 第1コーナーの飛び込む今井ちゃんを、K-oneの車載カメラが捉えていた。2コーナーでお尻を振っているものの、無事通過。

「前にはだれもいない! これはド緊張」

 コカコーラ・コーナーが待ち構えている。そこも通過した。が、ドキドキの今井ちゃんに襲いかかるドリドリ。ついに100Rの飛び込みで、すんなりインをとって、前に出た。そして、LEG大井号もこれにつづく。とうとう、「因縁の仲」の2車が、超接近。

 平野さんがナレーションの途中で叫んでしまった。

「なんか、今井ちゃんがちょっとフラフラしてるぜ~。あ、あ、あ~、あっはっは~」

  第1コーナーから100Rまでの1キロ足らずを、土屋、大井を本番のレースで、後ろに従えて走った代償はなんだったのか。