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局長47歳、人生最良の燃える秋 
 
せまる老眼、逆噴射、2度の大クラッシュにめげず
■富士フレッシュマンシリーズ やり直し決戦

【レポート/辻本征一郎=日産レーシングスクール校長】

車検を一番に終えるとは、局長も成長したもんだ

「局長、優勝おめでとうございま〜す」という言葉を用意して、富士スピードウェイのゲートをくぐった。
 きょうは、台風でお預けになった富士フレッシュマンレース第5戦が行われる日。
 パドックに着くと、すぐ局長の姿を発見。「おはようございます」の挨拶が終わらぬうちに、「辻本さん、車検は一番に終えましたよ」と、局長はニコニコ。
 おっと言い遅れたが、局長は、わが日産レーシングスクールの81年度修了生である。ボクが校長で、長谷見昌弘、星野一義といった一流選手が講師。13年前の第1期修了生の中に、高橋健二、柳田春人など現在のトップレーサーがいるのだから、同じスクールの修了生である局長もチョットしたものである。

 ところが、口の悪い連中は、「局長は××だから、早く修了させておいたほうが無難だとスクールで判断したんじゃないの」などと、いかにも外野らしくワイワイガヤガヤ。
 それはともかく、スクールでは、レーシングテクニックの基本から実戦まで、いろいろ学んでもらうのだが、<レースでは、一番で車検をパスさせ、コースに一番で入ること>という基本がある。だからきょうは、その基本どおり車検を受けることができたので、局長はニコニコなのである。きょうは、というところを敢えて強調したが、今までの局長のレースは、なぜか、基本に逆らって、車検を受けるのは遅いし、予選のコースインも遅い。もしそれで勝っていれば<天才>なのであるが、天才は<忘れたころにしか現われない>ので、やはりスポーツは基本に忠実でなくっちゃ。

■怪走の原因はここにあり!
 ベストカーレーシングチームのピットクルーが朝寝坊なのか、愚図なのか、とにかく、いつも準備が遅いのだ。レースのタイムスケジュールは自分から先行するぐらいがちょうどいいのに、いつもスケジュールに追っかけられっぱなし。
 ライバルたちは、予選のためにコースに入り、アクセルを全開でタイムアタックしているのに、局長のクルマは、まだパドックで、アッチいじくり、コッチ直し、というのがいつものパターンなのである。
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 辻本校長と第1コーナーで観戦
 やっと大急ぎでコースに入ると、エンジンがブスブス。シートがガッタン。 普通なら10周ちょっと回れるのに、局長は3周ぐらい走って予選がおしまい。これでは、せんだ・みつおスタイルで「ナハハッナハハッ!」と両手を振りたくなる。
 今回のレースは7月のレースがきように延期になったのだ。だから、公式予選も7月に終わっていて、その予選順にスタートする。予選は17番手で、ほぼ真ん中あたり。だから、7月のときも、準備を早くしてキチンと予選を走っていれば決勝でもっと前のほうに並べたのに……ということになるが<後の祭り>ではどうしようもない。

 どのスポーツでもそうだが、経過はイロイロあっても、勝負というのは結果しかない。途中まで1位でも、途中まで何点リードしていても、結果でまけてはダメなのである。 まア、今回は、わがスクール修了生の正岡局長がどこまで腕をあげたか、スクール当時の教えをキチンと守って走っているかどうか、などをジックリ観戦するのが目的だから、上位入賞や優勝は、次の機会までお預けというわけだ。
■応援団だけは超一流なれど……
 しばらくして、黒沢元治選手も応援にかけつけてきた。黒沢選手のビッグレースでの数々の優勝はモータースポーツファンなら先刻ご存じだと思うが、何年か前は、わがスクールの特別講師だったのだ。 マシンのセッティングも抜群だし、教えるほうもなかなかうまかった。
 ピットクルーをつとめる迷マネージャーの国沢クンなどと一緒にパドックで記念撮影。局長一人がマシンの横に立って……という写真をとるとき、局長の顔はやや緊気味。いつもはニカッと笑顔が多いのだが、やはり決勝レースが近づいてきたせいだろう。
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前列真ん中がいまや有名な国沢光宏先生
 カメラマンと一緒に第1コーナーに陣取る。 観客も第1コーナーがおもしろいことをよく知っていて、かなりの人が今や遅しとスタートを待っている。
「それにしても、一番むずかしい第1コーナーで見てくれなんて、局長もずいぶんと自信がついたものだなア」
 などと感心していると、場内アナウンスがウォーミングアップランを告げる。この走行が終われば、いよいよ決勝である。
 各車いっせいにウォーミングアップランの開始。決勝よりもスピードを落として第1コーナーに全車がなだれ込んでくる。
「アレレレッ! 局長のクルマどこ?」とカメラマン。
「手当り次第にパチパチやってれば、局長のカーナンバー55が何枚か写っているよ」
 な〜んて失礼なことはもちろんいうはずがない。 さて、いよいよ決勝レースのスタートだ。
 エキゾーストノートが一段と高くなり、各車がいっせいにスタート!

 多分、局長の心臓も破裂せんばかりだろう。いや、それとも年の功で意外にも冷静かも……。と考えているうちに、ドッと各車が第1コーナーへなだれ込んできた。横に3台、4台と並んでいるし、ブレーキングしながらヒール&トウのテクでギアダウンするとき、クルマのバランスを崩してスピンしそうになるクルマもある。
「オットット!」
 あっちこつちで接触しそうになるのを見て、思わず声を出してしまう。なにせ、スタート直後の第1コーナーでの事故の確率が非常に高いのだから、もし親戚の人や人が走っているのだったら、きっと胃が痛くなることだろう。
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 各車が先を争って第1コーナーへ

スリップを使ってIN側をとっていますね
 こういうシーンは何回も見ているボクでさえ、ハッとするのだから、第1コーナーの観客は多分、手に汗しているはずだ。
 おっと、局長は?……いるいる。白いボディにナンバー55。第1コーナーに対して有利なインをキープしている。
 ヨシ、ヨシ、さすがだ。しかし順位はスタートポジションとほぼ同じ。10周のレースだが、これからどこまで追い上げるかが楽しみだ。
    
 2周目21位。アレッ? どこかで数台に抜かれたナ。それともハーフスピンでも?
 それからの局長は、第1コーナーで抜きつ抜かれつのデッドヒートをみせてくれる。ブレーキング時点でのスピードは、多分180キロぐらいだろう。そのスピードからのブレーキン グは安定しているし、ヒール&トウもスムーズ。やはり相当上達している。
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 局長がスクールに入校したころ、
「辻本さん、あのクルマ、ストップさせましょうか」
 といったのが星野一義講師。あのクルマとは、何を隠そう局長のクルマだったのである。その局長も今やビンビン突っ走っている。以前の自己流から本物の走りに変身したは、お見事というほかない。

 残り4周あたりから局長の調子が出てきたが、時すでに遅く17位でゴール。
タイムはトップから30秒遅れの19分42秒65。1周平均ラップが1分58秒2台とは速くなったものだ。
 聞けば、前日は仕事の関係で練習ができなかったとのこと。今回の予選はなしだから、レース前のウォーミングアップランだけで、いきなり本番。それだけで上位入賞ができるほどレースは甘くないから、妥当な成績だといえよう。
 それにしても、局長の腕はかなり上達している。見ていてもっとも恐ろしい第1コーナーで、安心して局長の走りが見られたということが、それを証明している。
おお、星野さんも若かったね
 初めて局長と出会った頃のギクシャクした走りは全くない。ハイスピード走行の基本をうまく応用して、競走までしているのだから、本人の努力の賜物なのか、それともスクールがよかったのか――? モチ、ボクは後者だと思っているが……。                                  (ベストカー/84年2月号)

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