1月25日午前9時。とっくに第1レースのパルサーの予選が始まっていていい時間なのに、コース上にいるのは、路面状態を確かめるために周回する2台のマーシャルカーだけだった。
「畜生! ついてないよなぁ」
ぼくの傍らでこうぼやいている青年。恨めしそうに暗い雪空を見上げる。今回に限って、わがベストカーEXAでエントリーした「代役ドライバー」の加藤隆弘くん。22歳である。長髪、一見ミュージシャン風。昨年までRS中春からEXAレースに出場していたドライバーで、特に86年の第1戦ではせっかくポールポジョンを獲得し、決勝でも最終周までトップにいながら、100Rでクラッシュ、無念の涙をガボッと飲んでしまった貴重な経験の持ち主。それでも次のレースでは予選4位、決勝2位と結構やってくれるドライバーなのだが、どういう訳からか、シーズンの後半に入ってからは良い成績を残せないでいたのだ。
獅子座、タツ年と元気のよい星を持っていながら、雨が降ると、もうからきしダメになる男。そんなこんなで、借金も溜り、自分のマシンを売って、それに当ててしまったから、自分の力では、もうレースに出れなくなったし、そんな調子だからどこからも声のかかってくるほどのドライバーでもない、いわば悲しき失業ドライバー。 |
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