わが闘走 act.19                                  本文へジャンプ
1985 熱走報告 秘密兵器投入で頑張り過ぎて……
■全日本富士500マイル前座戦/7月27日inFISCO

 7月14日の富士フレッシュマン第5戦のEXAレースで、予選15位(出走31台)決勝13位という、まずまずの成績に気をよくしたぼくは、2週間後の「全日本富士500マイル」の前座戦「ニッサンパルサーEXAレース」にエントリーするかどうか、大いに迷っていた。
 なにしろ、オートバイの「鈴鹿耐久8時間」とダブッていて、この真夏のお祭りには作家・五木寛之さんと毎年ご一緒することになっているのだから……。

おお、ブレーキが余ってしまうぞ!
 ところが、この前座戦、土曜日(27日)開催だという。ならば、レース終了後、スッ飛んで鈴鹿入りすれば、なんとか間に合うじゃないか!

 そんな虫のいい計算が、あとになって、大いに後悔する結果を招くのだが、ともかく7月27日のレースをぼくは心待ちにしていた。それには理由がある。ここ2年間、ぼくの<成長>をひたすらに楽しみにして、名古屋から毎戦チーフメカとして来てくれるヤマちゃんが、素晴らしい秘密兵器を、ぼくのために開発してくれたからだ。

 ブレーキパッドである。名づけて「ユミマックス」。耐熱効果のよさに、その秘密があった。ノーマルだとだいたい摂氏400度までしか耐えられない。が、こいつは700度までOKだと、ヤマちゃんが太鼓判をおしてくれた。実は前戦の好結果、多分にこの秘密兵器に負うところがあったことを正直に告白しておく。

 なにしろ、第1コーナーのいつものポイントで車速を殺すと10bもブレーキングが余ってしまい、慌ててアクセルを踏み直す効きのよさ。

 同じ「ユミマックス」を装着した 田中重臣クンも同じ感想をもらしていた。だから、早くこの秘密兵器を使いこなせば結構いけるのでは、とぼくがほくそ笑んだとしても不思議はなかった。

1コーナーのブレーキポイントが違う!

秘密兵器を装着したEXAのキャリパー

ユミマックスとなづけたブレーキパッド
景色が斜めになっていく!
 
1周目の1コーナー。森岡車のスピンを切り抜けるが、この後、カメラマンは待ちぼうけ。

 朝の予選は15分、快調に先行する2台をとらえ、NEWコーナーに入った途端、コクンとエンジンが停まった。あわてて、グリーンに待避して、マシンを点検すると、電気系のカット・スイッチがOFFに落ちている。どうやらNEWコーナー入り口で、縁石を利用してマシンを右に向けた衝撃で、スイッチがカット状態になったらしいのだ。

 で、タイムは伸びず15位に。いつもなら、まずまずと思うところだろうが、当方、いささかいれこんでいた。加えて、前戦で追い抜けた21番、星崎一浩クンや47番、金治芳隆クンがそれぞれ2、8位と好位置をキープしているんだものね。

 決勝レースは午後2時20分スタート。真夏の太陽に灼かれた路面は、すでに60度近い。となると、タイヤは3周すぎればタレてしまう。で、序盤での位置がとても大事になってくる。ブレーキは「ユミマックス」だ! 1周目のコーナーで思い切り攻めてみよう。 スタート。いつもより、早めにシフト・アップ。ひどくスムースに加速する愛車。2台ほどパスして第1コーナーへ。目の前を行く 森岡車が急激に右に切れ込んでスピンする。わずかにぼくの左前輪と接触したが、かまわず第1コーナーを通過。つづく、右回りの高速100Rを3速にシフトダウンしていい感じで征服、いよいよ、次の勝負どころであるヘアピンへ。

 先行する30番と が右へ寄っている。しめた! ぼくは早めにINを攻めた。と、縁石に左車輪を乗り上げ、あっという間にぼくの視界は右へ傾き、ゆっくりと逆立ち状態へ移っていくじゃないか!

 あとはもう、ハンドルを握りしめたまま、この信じられない異様の世界が停止すること、そして他車に迷惑をかけないことを祈るばかりだった。

 亀の子になったぼくのマシンはコースを斜めに滑走して、なにごともなくグリーンでとまった。逆立ちのまま、そこでぼくのやったことは左足でカット・スイッチを蹴るようにして切り、そして5点シートベルトをワンタッチで解除し・開けてあった窓から、正常の世界へ復帰することだった。

    ホントに亀になってしまったわがEXA.。マシン再生にいくらかかるのやら。
 反省点はいくつもある。が、得たものも大きい。序盤戦で身の程知らずの挑戦をするにはそれなりのトレーニングを積んでからのこと。ま、ぼくの腕ではヤマちゃんの<力作>はいかせなかったが、このところ低迷気味の田中重臣クンが、最終ラップまで2位をキープし、結局はNEWコーナーの入り口でミスをしたものの、好成績をおさめたのは、やはり新兵器の効果だろう。

 傷心の当方、鈴鹿へ向かう足取りは重かった。

<編集部注>総編集長の身体についての安否については心配無用です。アクシデント自体によるケガはなかったのですが、クルマを起こす時に肉離れをしたそうです。なにしろ、トシですから。               
                                 (85年9月10日号)

NEXT