伊予柑の黄金色と「正岡建設」の文字
河原」の部落に入った。カタカタと機械が稼働している工場らしき建物の脇でクルマを駐める。目に飛び込んできたのは、伊予柑がたわわに実った空地であった。拳ほどの大きさの黄金色の饗宴が手招きする。なぜか「ここだ!」と直感してしまった。
父の回想だから、それは明治末期のこととなる。
「重兄ィ(しげにい、と発音)に連れられて、お袋さんの実家に行くと、大けな蜜柑がいっぱい、なっちょってのぅ。そこで遊ぶのが、わしら兄弟の楽しみじゃった。蜜柑畑を囲う垣を入るのに、重兄ィがうまい手を使うんじゃ。尻からゴソゴソ垣に入っていくのよ。すると、垣の向こうにいた作男が、こらぁ、またワルソーが蜜柑盗りにきたァ、ちゅうて尻を掴んで、スポッと引き寄せるやろ。うわぁうまく行った、重兄ィの声で犯人が儂らと知って、作男のくやしがるのがおかしゅうてのぅ」 何度も聞かされた、父の幼き日々の舞台が、すっぽりはまる風景が、そこにあった。
集落の家々の瓦屋根の上に烏帽子の形をした山が見える。父の話にあった「烏帽子岳」かな。あとで「恵良(えりょう)山」と知るが、話に聞いた通りの景色に、心、踊らぬはずがない。デジタル・カメラを回した。崩れ落ちた廃屋が、やたら気になる。この一帯に「正岡」姓は残っているのだろうか。 |

| 父の回想によく似た情景。通りがかった老人に訊ねることとした |
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| 崩れ落ちた廃屋にドキッとしてしまうのは、なぜか? |
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