幻のルーツ 風早へ 九萬山へ 

第2部 18
除籍原簿のあった福岡県直方市は遠賀川沿いの町
福知山が正面にある 高縄山とその姿がよく似ている
かつては筑豊炭田景気の中心にあって
消費地としてで大いに賑わった直方駅
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八幡の従姉から「除籍謄本」が届く!
 黄金週間の明けた5月11日に、八幡の嶋津良枝さんと電話が繋がった。そろそろ、ぼくからの電話が来るものと、待ってくれていたという。10歳年上の従姉の声に興奮のいろがある。きっとなにか収穫があったに違いなかった。
祖父重吉に関する5件の記載
「昨日(5月10日)、直方と宮田へ行って来ました。手書きの戸籍謄本やけ、字が小さくて、ちょっと読み辛いけど、どうする?」

 直ぐに郵送してもらえるか。そして、今、この場で読んで欲しい。ぼくの答えは決まっていた。「手書きの謄本」というところに、すでに捜し求めていた「鍵」が秘められている。どぉーん、とこちらの興奮が弾けそうになった。

「じゃあ、読んでみるわ。いい?」
 以下、従姉とのやりとりのニュアンスも愉しいが、まずは要点だけは整理して置こう。

田中重吉に関する記載は5件。

 明治26年4月8日、愛媛県風早郡粟井村大字河原、田中嘉蔵弟入籍

 愛媛県上浮穴郡明神村大字西明神、正岡慶三兄、明治31年1月7日分家ス

 愛媛県温泉郡粟井村大字久保365番地第貮ヨリ転籍届出、大正7年1月23日受付入籍

 大正15年10月26日午前7時、本籍ニ於テ死亡、仝居者正岡順吉届出、仝月27日受付

 昭和2年4月正岡順吉ノ家督相続届アリタルニ因テ本戸籍ヲ抹消ス

やっぱり久万山系の正岡氏だったのか
「こんなところだけど、いい?」
「いやぁ、有り難う。細かい点でいろいろ聞きたいけれど、それは謄本をよく検討してからにします。わざわざ直方まで足を運んで貰って、有り難うね」
「こっちも気になっていたことだから、あなたに頑張って貰うわ。そんな訳で昨日は留守にしとったけ、あなたからの原稿のコピーはまだ受け取ってないのよ。もうすぐ届くはずだから……早く読みたいのよ」
 開封するために鋏を持って待機している、と明るく笑う。
直方陸橋から多賀神社を臨む
「やっぱり久万山系の正岡だったのか」
「えっ、なに、それ?」
 従姉が反応する。われらの祖父母が正岡家に両養子で入っているのは、彼女も知っていた。が、どんな血縁的な関わりで正岡家を継いだのか。そしてどの系譜に繋がる「正岡」なのかをこれから追跡しなければならない。それが「上浮穴郡明神村西明神」とあれば、久万山系と判ったし、父・徳一が呪文にように繰り返した「クマヤマ」は「西明神」を指していた。残念ながら「周平」ではなく「慶三」とあり、それも「兄」という関係で表記されているのが、気になる点だ。

遠賀川の河川敷も市民公園となっていた
「ふ〜ん。そんなものなの。でもなんだか、わたしも嬉しくなって、張り切ってきたわ」
「それはよかった。では、謄本をすぐに送ってください」

 当然のことながら、すぐにでも国立図書館に急行したい。狙いが「上浮穴郡久万町」に絞れたのだから、ここからは直線的に攻め上れるはずであった。

 そして、5月17日、待望の戸籍謄本が届いた。と同時に、国会図書館でマイクロ・フィッシュからの複写を依頼していたのが、送られてきた。明治43年に刊行された『上浮穴郡案内』(小川薫水編・船田右文堂発行)である。この中に新しく正岡一族にその名を加えた「正岡慶三」に関わる記述が掲載されていたのである。

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